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東京地方裁判所 昭和63年(ヨ)2030号 決定 1988年6月28日

当事者   別紙当事者目録記載のとおり

右当事者間の昭和六三年(ヨ)第二〇三〇号株主権行使禁止仮処分申請事件について、当裁判所は債権者の申請を理由あるものと認め、債権者が保証として金一〇億円を立てることを条件として、次のとおり決定する。

主文

債権者らは、別紙株主総会目録記載の債権者の定時株主総会において、別紙株式目録記載の株式につき議決権を行使してはならない。

(裁判長裁判官山口和男 裁判官佐賀義史 裁判官坂倉充信)

当事者目録

債権者 国際航業株式会社

右代表者代表取締役 桝山明

右債権者代理人弁護士

関根栄郷

同 藤村義徳

同 吉木徹

(一)債務者 新都心興産株式会社

右代表者代表取締役 北川弘一

(二)債務者 渋谷ファッションセンター株式会社

右代表者代表取締役 渡辺輝男

右債務者(一)(二)代理人弁護士

磯辺和男

同 高橋順一

同 増田亨

右債務者(一)(二)代理人弁護士

河合弘之

同 堀裕一

同 青木秀茂

同 安田修

同 長尾節之

同 荒竹純一

同 野末寿一

同 佐藤恭一

同 千原曜

同 野中信敬

株主総会目録

昭和六三年六月二九日午前一〇時、東京都千代田区一番町二五番地ダイヤモンドホテル西館二〇一号に於いて開催される債権者国際航業株式会社の第五五回定時株主総会

株式目録

株主  株主番号   株式数

新都心興産株式会社 九二〇〇―八三三   五八九〇(千株)

渋谷ファッションセンター株式会社 九二〇〇―八三九   四五〇〇(千株)

株主権行使禁止の仮処分命令申請書

当事者の表示

別紙当事者目録記載のとおり

申請の趣旨

別紙当事者目録債務者欄(二)乃至(一一)記載の各債務者は別紙株主総会目録記載の債権者会社の定時株主総会において別紙株式目録記載の各々の名義の株式について議決権及びその他株主権の行使をしてはならない。

債務者株式会社光進は右当事者目録債務者欄(二)乃至(一一)記載の各債務者に別紙右定時株主総会において別紙株式目録記載の各々の名義の株式について議決権の行使をさせてはならない。

債務者らは、右定時株主総会会場に入場してはならない。

債権者会社は、右定時株主総会において、債務者らの右各株式についての議決権及びその他の株主権の行使を許してはならない。

債権者会社は、右定時株主総会会場に、債務者らを入場させてはならない。との裁判を求める。

申請の理由

第一、債権者会社の概要(疎第一乃至七号証)

1、名称

国際航業株式会社

2、債権者会社の目的

(一) 測量

(二) 地質調査、海洋調査、環境に関する調査

(三) 土木および建築の計画・設計・施工・管理

(四) 技術コンサルタント業務

(五) コンピューター情報処理サービスおよびソフトウエアの開発・販売

(六) 土地建物の賃貸および売買

(七) 測量・調査・設計に関する機械、材料の売買・リース並びに展示物の製作

(八) 前各号に付帯する業務

3、株式及び役員の状況

債権者会社の資本金の額は現在一六七億七八五四万六六〇〇円であり、発行済株式総数は四〇一一万五二六三株である。

主な株主は以下の通りである。(所有株式五〇万株以上)

新都心興産株式会社 五八九〇(千株)

渋谷ファッションセンター株式会社

四五〇〇(千株)

株式会社ミヤマ 三二〇四(千株)

株式会社大和銀行 一五四七(千株)

財団法人桝山教育振興会

一二二四(千株)

株式会社自在 一二〇〇(千株)

株式会社法楽 一一五〇(千株)

住友生命保険相互会社

一一〇六(千株)

株式会社富士銀行 一〇八五(千株)

株式会社第一勧業銀行

一〇八五(千株)

株式会社三曜 一〇五〇(千株)

株式会社河北 九五〇(千株)

株式会社天風 九三〇(千株)

柳橋ビル株式会社 七五〇(千株)

株式会社アバンス 七二〇(千株)

図南興業株式会社 五二三(千株)

アイ・ジー・エフ株式会社

五〇〇(千株)

クラウン・リーシング株式会社

五〇〇(千株)

有限会社千代田システムサービス

五〇〇(千株)

会社の役員は次のとおりである。

代表取締役会長 桝山健三

同  社長 桝山明

同 副社長 武田裕幸

取締役 仁木光男

同 三浦孝雄

同 三木彬嗣

同 大野勝次

同 陣内陽一郎

同 濱口博光

同 石橋紀男

同 松本保男

同 野和田晴彦

同 池田宗弘

同 永野長平

同 黒岩和雄

同 吉田暁生

監査役 持田實

同 西村久

同 新井重春

4、事務所

本店は東京都千代田区麹町三丁目一〇番地

に所在し、支店は別紙(疎第一号証支店欄)のとおりである。

二、債権者会社経歴

債権者会社の前身である三路興業株式会社は昭和二二年九月一二日設立された。

同社は同二三年国際不動産株式会社に商号を変更し、同二四年には子会社として日本航測株式会社が設立された。

そして昭和二九年には日本航測株式会社を合併し、商号を現在の社名である国際航業株式会社に変更し、同三一年に航空機使用事業免許を取得し、業務内容を拡張し、同三三年に本社ビルを東京都千代田区六番町二番地に新築移転し、同三六年に東京証券取引所市場第二部に上場した。

その後、昭和三七年には設計、地質の事業体制を整え、総合コンサルタント会社となり、同四六年には、測量、地質・海洋、設計、開発の四事業部制を整え、昭和五六年六月に桝山明が代表取締役社長に就任してからは、さらに業績も向上、増収、増資を重ね、ついに昭和六二年九月、念願の東京証券取引所市場第一部に上場した。

その間の債権者会社の資本金の推移は次のとおりである。

昭和四三年 金五億円

昭和五四年 金六億円

昭和五五年 金六億六、〇〇〇万円

昭和五七年 金七億六、〇〇〇万円

昭和五八年 金八億三、六〇〇万円

同年 金三五億円

昭和六一年 金七七億円

昭和六二年 金八一億円

同年 金一六二億円

現在 金一六七億円

三、債権者会社の業務状況

債権者会社の業務の内容は測量、調査、建設コンサルタント、地質調査、海洋調査、不動産および機械の賃貸・売買の各部門からなつている。

1、測量、調査事業部門

空中写真撮影・測量、測地・地上測量、台帳管理図作成、応用精密計測等を主な事業内容とするが、とりわけ、空中写真撮影、測量は、従来主に地図作りに利用されていたが、今日では、環境調査、災害調査、都市管理等の有効な手段として応用分野が広がつている。

2、コンサルタント事業部門

道路交通解析調査、道路計画・設計、構造物・橋梁設計、廃棄物処理処分場計画・設計、上下水道計画・設計、河川計画・設計等を業務内容とする。

3、地質調査事業部門

地質・土質調査、地震・災害調査、地下水調査、砂防・地すべり調査等を業務内容とする

4、海洋調査事業部門

海洋調査、海底地質調査、海洋環境調査、気象・海象調査、漁業関連調査等を業務内容とする。

5、不動産・機械の売買・賃貸事業部門

オフィスビルディングの賃貸、住宅分譲、測量機械の賃貸等を業務内容とする。

四、債権者会社の最近四年間の営業成績は別紙疎第七号証のとおりである。

第二、コーリン産業による債権者会社の株買い占めの経緯について(疎第八乃至一七号証)

一、債権者会社の株価は、昭和六二年五月頃には二〇〇〇円台であつたが、その後徐々に上昇し始め、同年七月頃には四〇〇〇円台、東京証券取引所第一部に上場となつた同年九月頃には七〇〇〇円台と急騰した。この異常な株価急騰の原因は、後述するように、いわゆる仕手集団として近年マスコミを賑わしているコーリン産業株式会社(現在の正式な商号は株式会社光進であるが、以下「コーリン産業」と言う。)による株買い占めによるものであつた。昭和六二年九月三〇日時点においては、コーリン産業の名義書換済み所有株式数は二五〇万株(発行済株式総数の6.37パーセント)にすぎないが、後述の経緯からして同年七月末の時点においては、コーリン産業側が買い占めた株式の総数は名義書換未了の分も含めて既に約一七〇〇万株(全体の約四五パーセント)に達していたものと思料される。

二、1、コーリン産業による株買い占めの事実が次第に明らかになるにつれ、債権者会社内部にも動揺が広まる中、債権者会社の子会社である「ウイング」の代表取締役富嶋次郎(以下「富嶋」という)が、コーリン産業の実質的代表者小谷光浩(以下「小谷」という)と債権者会社の代表取締役社長桝山明(以下「桝山社長」という)との仲介役に乗り出した。

2、すなわち、富嶋はかねてから懇意にしていた元運輸大臣の三塚博自民党代議士(衆議院議員・宮城一区選出)が小谷と親しいことから、昭和六二年七月末頃、三塚代議士を通じて小谷と接触し、数日後の同年八月四日には桝山社長と小谷とを引き合わせた。

小谷はこの会議の席上、桝山社長に対し、現実には過半数は買い占めていなかつたにも拘らず、過半数の株を買い占めたと虚偽の事実を述べ、表面的には経営参画の意思があるかのように装い、共同経営を行うよう桝山社長に迫つた。

3、三日後の八月七日、桝山社長は富嶋の呼び出しによつて再び小谷と会い、小谷が用意して来た覚書(疎第一七号証)に、調印させられてしまつた。右覚書の内容は、一見すると桝山社長と小谷との共同経営を定めたかのようであるが、具体的な事項は何ら定められてなく、小谷の意図するところは、覚書第三条に記載されているようにコーリン産業が買い占めた債権者会社の株を債権者会社の株を債権者会社に買い取らせ、巨額の利益を得ようとすることただ一点に尽きるものであつた。

三、1、桝山社長及び債権者会社は、右覚書の内容が到底受け入れられるものではなかつたことから、覚書の履行はできない旨小谷側に伝えると、小谷は富嶋の立場を利用して、コーリン産業所有の株の殆ど(約一、七〇〇万株)を富嶋名義に変更し、富嶋に債権者会社との交渉をさせた。富嶋は小谷の指示に従い、右覚書の履行を迫ると共に、一方ではコーリン産業所有の株を全株買い取るよう債権者会社に迫つた。しかし、右買い取りの条件も到底受け入れられるものではなかつたため、債権者会社が拒否すると、小谷は債権者会社に対する株買い取り交渉の担当を富嶋から北見義郎(暴力団関係者との噂がある)に代えたが、その交渉も成功しなかつた。

2、右交渉の過程で、昭和六三年三月に、コーリン産業所有の株式の名義が富嶋から別紙当事者目録記載の債務者(二)から(一一)までに変更されたが、この債務者らが単なる形式的名義人で、実質的な株の所有者はコーリン産業であることは、疎第一一号証(五月二〇付分)及びその後の小谷の行動からも明らかである。

すなわち、小谷は買い取り交渉が困難と見るや、債権者会社を乗つ取る工作に着手、多数派である債権者会社側の切り崩しを図り、債権者会社の株主総会(昭和六三年六月二九日開催予定)を目前にした同年六月一七日頃、債権者会社の代表取締役会長から、合計五二〇万株(株式会社ミヤマ三二〇万株、財団法人桝山教育振興会一二〇万株、会長個人八〇万株)の右株主総会についての委任状を取り付け、安定多数を確保するや、同月二一日から二三日にかけて桝山社長に対し、株主総会前の社長辞任、定款により副社長を議長とすること及びコーリン産業側からの役員の送り込み等を強く要求するに至つたのである。

このままの状態で六月二九日の株主総会が開催されれば、債権者会社の経営意思及び能力もない仕手集団コーリン産業によつて、債権者会社が乗つ取られることは必至である。

第三 コーリン産業の実体(疎第一八乃至二五号証)

一、コーリン産業は小谷が昭和四五年一月に設立した会社で、不動産の売買及び仲介等を目的とするが、昭和五八年頃より、小谷の政財界の人脈、金融機関からの豊富な資金援助を背景に、協栄産業、飛島建設、蛇の目ミシン、養命酒、小糸製作所株などの仕手戦を次々と手掛けて巨額の利益を得、「コーリン銘柄」との言葉が生まれるまでになつた。

二、コーリン産業の仕手戦は、株の買い占めによつて株価を意図的に繰り上げ、いわゆる売り抜けによつて巨額の利益を得る場合と、飛島建設の場合のように、買い占めによつて高騰した株を会社に買い取らせることによつて巨額の利益を得る場合とがある。

本件において、コーリン産業が債権者会社の株を買い占めた目的が飛島建設の場合と同様に、会社経営権の取得ではなく、あらゆる手段を使つて株を債権者会社に買い取らせて巨額の利益を得ることにしかなかつたことは、前述の覚書第三条の内容、その後の交渉経緯、ダミーを利用した名義変更等の事実からして明白であり、疑問の余地がない。

右のような手段によつて巨額の利益を得ることは到底容認し得るものではなく、マスコミによるコーリン産業の実体の暴露及び厳しい追及に、ついに小谷は、昭和六三年三月一一日、コーリン産業の商号を株式会社光進に変更すると共に、代表取締役を辞任、中山好文を後任とし、表面的にはコーリン産業から身を引く形を取らざるを得なくなつたのである。

第四 申請に及んだ事情

以上記載のような実体を有する債務者コーリン産業が前記載の経緯によつてダミーを用いて取得した株式について、株主総会に出席し、議決権を行使することを認めるならば、コーリン産業は、債権者会社を健全に経営していく意思がないのであるから、株式買取要求に応じない桝山社長ら現経営陣をコーリン産業の意のままになる経営陣に交代させ、債権者会社の乗つ取りを実現する不当な議決権行使がなされることは明らかである(疎第二七号証)。

コーリン産業は、その所有株式を第三者に買い取らせて巨額の利益を得ることに、その究極の目的があることを考えるならば、かような仕手株による巨利の追求の一環としてなされる議決権及び株主権の行使は正当な権利行使とは到底認めえないものである。

別紙株式目録記載の各株式の実質的所有者は、コーリン産業であり、ダミーたる名義人らは、各株式について何らの権利も有していない。

実質上株式を取得していない者が名義書換を受けても株主となることはないのであるから、会社は名義のみの株主の株主権行使を拒むことができると言うべきであり(注釈会社法・一五六頁)、従つて、単なる名義のみの債務者らの株主権の行使は、コーリン産業のダミーであるということのみで、既に正当な権利行使とは到底認められないものである。

仮にこのような株主に株主権の行使を認めるならば、コーリン産業の意のままに、仕手株による巨利の追求手段として不当極まりない議決権及び株主権の行使がなされることは明白であり、かかる株主権の行使は甚だしい権利濫用であると言うべきである。

しかるに、第五五回定時株主総会は本年六月二九日に開催される予定であり、もし、このまま別紙株式目録記載の株式について、その議決権及び株主権の行使を停止し、保全しておかないならば、前記載のような仕手株による利益追求の一環としての不当な議決がなされてしまい、最早、回復し難い損害を蒙る虞れが充分にあるので本申請に及ぶ次第である。

添付資料

一、疎各号証写し 各一通

一、資格証明書 一二通

一、委任状 一通

疎明方法

疎第一号証 会社登記簿謄本

疎第二号証 定款

疎第三号証の一、二 パンフレット

疎第四号証 第五四期有価証券報告書

疎第五号証 全株主一覧表

疎第六号証 半期報告書

疎第七号証 営業成績表

疎第八号証 報告書

疎第九号証 株数異動を表する書面

疎第一〇号証 朝日新聞

疎第一一号証 東京タイムス(六三年自五月一六日至六月二四日)

疎第一二号証 オール投資八八年四月一五日号

疎第一三号証  同 八八年新年号

疎第一四号証 インサイダーNO・一七八

疎第一五号証  同 NO・一八一

疎第一六号証 新政経情報

疎第一七号証 覚書

疎第一八号証 情報メモ

疎第一九号証 ビジネス

疎第二〇号証 株式新聞

疎第二一号証 タッチ

疎第二二号証 週刊大衆

疎第二三号証 財界展望

疎第二四号証 東京タイムス(六三年三月二五日)

疎第二五号証 読売新聞

疎第二六号証 第五五回定時株主総会招集通知

疎第二七号証 商事法務NO・一一一〇

当事者目録

債権者 国際航業株式会社

右代表者代表取締役 桝山明

右債権者代理人弁護士<省略>

(一)債務者 株式会社光進

(旧商号コーリン産業株式会社)

右代表者代表取締役 中山好文

(二)債務者 新都心興産株式会社

右代表者代表取締役 北川弘一

(三)債務者 渋谷ファッションセンター株式会社

右代表者代表取締役 渡辺輝男

(四)債務者 株式会社自在

右代表者代表取締役 加藤達夫

(五)債務者 株式会社法楽

右代表者代表取締役 政金正徳

(六)債務者 株式会社三曜

右代表者代表取締役 佐々木栄一

(七)債務者 株式会社河北

右代表者代表取締役 市川惣司

(八)債務者 株式会社天風

右代表者代表取締役 富樫静夫

(九)債務者 株式会社アバンス

右代表者代表取締役 廣田芳英

(一〇)債務者 柳橋ビル株式会社

右代表者代表取締役 米持幸代

(一一)債務者 株式会社伊豆あやめカントリー倶楽部

右代表者代表取締役 山田幾男

同 山田裕俊

株主総会目録

昭和六三年六月二九日午前一〇時、東京都千代田区一番町二五番地ダイヤモンドホテル西館二〇一号に於いて開催される債権者国際航業株式会社の第五五回定時株主総会

株式目録

株主   株主番号 株式数

新都心興産株式会社 九二〇〇―八三三 五八九〇(千株)

渋谷ファッションセンター株式会社 九二〇〇―八三九 四五〇〇(千株)

株式会社自在  九二〇〇―八二八 一二〇〇(千株)

株式会社法楽  九二〇〇―八二四 一一五〇(千株)

株式会社三曜  九二〇〇―八二七 一〇五〇(千株)

株式会社河北  九二〇〇―八二五 九五〇(千株)

株式会社天風  九二〇〇―八三〇 九三〇(千株)

株式会社アバンス 九二〇〇―八二九 七二〇(千株)

柳橋ビル株式会社 九二〇〇―八二六 七五〇(千株)

株式会社伊豆あやめカントリー倶楽部 九二〇〇―八三一 二八六(千株)

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